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メタフィクションと彼女の狭間で――『冴えない彼女の育てかた』第0話「愛と青春のサービス回」

アニメ ノイタミナ 冴えない彼女の育てかた

脚本:丸戸史明、絵コンテ・演出:亀井幹太、作画監督:高瀬智章

原作範囲:オリジナル回

 遂に『冴えない彼女の育てかた』の放送が始まった*1。現在、富士見ファンタジア文庫から刊行されている既刊八冊のボリュームがあるにも関わらず、初回放送は敢えてオリジナル回という決断をスタッフは下した。しかも、温泉回である*2

 本作『冴えない彼女の育てかた』はフジテレビ“ノイタミナ”ほかにて放送が開始されたテレビアニメだ。本稿では本日未明に放送された第0話「愛と青春のサービス回」を取り扱う。

 

 さて、本エピソードは原作第5巻程度の秋頃である。その為、原作第4巻より登場する氷堂美智留が登場していたりしている(それ以外はネタバレなので避ける)。冬コミを目標に制作・開発している同人ゲームのロケハンの為に山奥の温泉旅館に訪れるというストーリーラインなのだが、如何せん原作第1巻相当となる第1話の放送前に放送するだけあって、そこにはプロデューサー陣と亀井幹太監督、原作・シリーズ構成・全話脚本の丸戸史明の思惑が見て取れる。

 まず、アバンの霞ヶ丘詩羽から始まる一連のセリフが丸戸らが意図して仕掛けたもの、と断言できる。思えば、「ノイタミナラインナップ発表会2014」でアニメ化が発表された際のPVでも詩羽が「ノイタミナがこんな女の子が可愛いだけの志の低い作品を~」と話していたし、今回も「何? 澤村さんの一押しってあれなの? 一話からパンチラや全裸満載だったくだらないハーレムアニメよね。三話まで付き合ったことを後悔したわ」という発言に自作をディスりながらもそのようなオタクを取り扱う作品だ、とさり気無く表現した。本エピソードではパンチラこそないものの、開始早々ヒロインたちの全裸姿が映っていたし、フジテレビは規制がそこまで多くないために他局では頻繁に発生する所謂“湯気”が発生しなかったことでより鮮明になっている。

 ここで注目したいのはメタフィクションを挿入する意味だ。それは現実味のないライトノベル原作のハーレムアニメと第一印象を植え付けられる前に、メタフィクションとして自作やその他のフィクションについて言及することである程度のリアリティを獲得するところにあるだろう。ノイタミナで過去に放送された『Robotics;Notes』では2019年という近未来を舞台とし、巨大人型ロボットが戦うというおよそ現実味のない話をARアノテーション(拡張現実)という実在する技術をポケコンを介して繋ぎ、あたかもこの世界でもあり得るようなリアリティを構築した。『図書館戦争』や『C』もそのような技法から外れていない。本作ではオタク側の人間(英梨々や詩羽)と非オタク側の人間(美智留)の会話――画面こそ肌色で埋まっていながらも話の内容はそれを盗み聞きしている主人公・安芸倫也が嫉妬するほどに話に加わりたいほどに濃密な会話をアバンに持ってくることでリアリティを生もうとしたのだ。

 

 ここで改めてノイタミナという放送枠で放送する意図を考えてみよう。ここまでに肌色の多い作品はライトノベル原作が三作目といえど無かったし、もとよりのノイタミナファンは困惑したことだろう。去年の9月に初代ノイタミナ編集長の山本幸治プロデューサーがフジテレビを退職し、編集長は2代目・森彬俊にその座が移ったことで森が兼ねてより「ノイタミナでギャルゲー原作を」との構想の序章としてアニプレックスで企画が動いていたであろう本作に白羽の矢が立ったのだ。丸戸史明シナリオライターとして『WHITE ALBUM2』や『この青空に約束を―』などの作品を執筆していたし、その序章としては確かに作用するだろう。

 しかし、これまでのノイタミナラインナップを観てみると、本作が一際違和感を発している。本作と同時に放送している『四月は君の嘘』とも激しいギャップが生じているし、『PSYCHO-PASS』が前番組だとは誰も信じないだろう。だが、本作はノイタミナが一般層からコアなアニメファン向けにも開拓を進めてきて、更に新たな領域へと進んだとも言い換えられる。むしろ、一般層向けだけでは画一の固定観念から抜け出せなくなるし、DVDBDの売り上げ的にも厳しいところがあると言える。この新たな戦略が功を為すかはまだ解らないが、本作がノイタミナの未来を担っていると言っても過言ではない。

 

 さて、本エピソードに話を戻そう。本エピソードでは亀井監督の過去作である『俺の彼女と幼馴染が修羅場すぎる』でも多用された非黒輪郭線のカットが数十カットではあるが存在した。まだ次話以降も使用されるかが不明なので何とも言えないが以後も使用されるならば使う場所には意図が存在するのだろう。現状ではヒロインが集合していたり、各ヒロインに対して倫也が見つめているカットに使用されることが多いので、各ヒロインとの関係性を表す重要なものとなるのではないか、と考えている。

 

 最後に、原作ファンの目線として本エピソードを何回も観たが、未読者はこの導入で良かったのか甚だ疑問である。続く第1話の予告でも「いきなり温泉回とか心置きなく一話切り出来る実に視聴者に優しい構成ね」と詩羽が呟くように、視聴者を篩にかけているのは確かだろう。だが、『涼宮ハルヒの憂鬱』における「朝比奈ミクルの冒険 episode00」や『Fate/stay nightUnlimited Blade Works】』における第0話のように本エピソードは未見組にも窓口を広げておく長尺のPVのようなものだ、とも考えている。来週の第1話より遂に話が動き出す。季節は春。その出会いを期待しながら、本稿はここで〆る。

*1:サガテレビは今夜、岡山放送はもうちょっと後だが

*2:温泉ってつまり『WHITE ALBUM2』のあのシーンのセルフオマージュですよね、丸戸先生