私たちのアツイゲリラ活動、サイコパス始まります――『劇場版PSYCHO-PASS サイコパス』

 諸星すみれちゃんが出ていることをエンドテロップで知ったのでこのタイトルです。他にも木村昴さんとか何人か「え、出てたの!?」みたいなキャストが居ましたが演技力凄いなぁと感心しました。そんな声豚要素はここで終わりにします。

 1月9日に公開された『劇場版PSYCHO-PASS サイコパス』ですが、一人で観に行く予定だったところ波野淵紺さんに誘われまして二人で鑑賞してきました。鑑賞前にアニメ談義、鑑賞後に感想戦をしまして、とても有意義な時間になりました。この場を借りて感謝します。また今度ヒサゴさんも混ぜてUSTやりましょう。

 さて、以下の文章は『劇場版PSYCHO-PASS サイコパス』のネタバレが多く含まれます。

  シビュラシステムによって人間の心理状態を数値化するサイコパスが測定出来るようになった近未来で、そのシステムが東南アジア連合に輸出された。時を同じくして日本に密入国したテロリストを確保した公安局は彼らの記憶を呼び起こす。すると彼らの記憶からは3年前に失踪した男・狡噛慎也の姿が浮かび上がった。それを知った監視官・常守朱が単身、東南アジア連合の首都・シャンバラフロートに向かうという導入からはじまるSF刑事ドラマ。
 TVシリーズ第1期の主要スタッフがほぼそのまま参加している他、劇場版というフォーマットに移ったからか話は国内から世界に拡大し、今までのTVシリーズやノベライズで築かれた設定やキャラクターがさらなる飛躍を魅せていました。というかノベライズとか派生作品を読んでいると結構理解できる幅が増えると思うんです。例えば第1期の後半や『PSYCHO-PASS ASYLUM 1』所収の「レストラン・ド・カンパーニュ」などでも言及される食糧自給の問題であるとか、同書所収の「無窮花」から海外の独裁政治の問題が把握できて世界観が広がっているのでそこを知りながら観ていると、「食料が天然食料だからこのシビュラシステムはいくらシャンバラフロートといえど完全じゃない、ってことはいじってるんだな」ということを冒頭で考えまして。というか「アイムニコラスウォン」からあんな胡散臭いキャラクター出されたらどう考えてもサイコパス規定値超えてるな、でもシャンバラフロートにいるってことはシビュラ弄ってるな、と解るでしょう!何であのセリフで笑わないんだよ、神谷浩史が凄く胡散臭いキャラクターで「アイムニコラスウォン」って言ってるんですよ!しかも字幕が戸田奈津子って。ひゃぁー。

 閑話休題

 戦闘シーンはシラットと軍団の戦闘を忠実に描ききり、これでもか、という程に東南アジアのカオス感を醸し出していて、そのような戦闘シーンからの狡噛との再会は滾るものがあり、TVシリーズ第2期では描かれなかったバディもの感が復活し、ラストの戦闘シーンまで堰を切ったように物語が進んでいきます。もう堪らない。
 この劇場版ではもちろん狡噛や朱が主人公ではあるのですが、第1期で大切な人を二人も失った宜野座伸元も十二分に主人公と言えるポジションに置かれていて、最後のヘリからドミネーターを放つシーンと狡噛との再会部分はセリフや行動含めカッコ良いという言葉を体現しています。ポニチカさんマジ惚れます。
 また、全体的にモノトーンで話が繰り広げられたり、カメラワークからしてこれがProduction I.Gの本気、と感じられるものでした。第2期はタツノコプロが制作であったり冲方丁がシリーズ構成でしたが*1、制作が先行していた劇場版に合わせて話を構成したとなると掌返しせざるを得ないものだったと再認識。ノベライズによって描かれた設定やTVシリーズにて匂わせていた部分が集まって今回の劇場版になっているように思えました。
 ストーリーラインも深見真フルスロットルで、海外に出て銃器を描けるとなるとこの人はこんなに映えるんだな、と観ている間興奮を抑えられなかったです。塩谷監督の演出も相俟ってのことである上にシビュラシステムやそれに続くラストシーンなど世界に関わる部分は虚淵玄が書いていると思われるんですが、2人の力が国内という狭い舞台では本当に制限されていたように感じました。日本国内から東南アジアに舞台を移した為に、銃器・戦車など現代(21世紀)の武器が解放されたからか深見真フルスロットルな内容で吹きました。『アフリカン・ゲーム・カードリッジス』という著作がありまして、僕はそれが同じく深見真フルスロットルな内容で大好きなんですが、狡噛と同じくここにも鎖から解放された途端に生き生きしてる人がいるぞ!という感じでホント面白かったです。ニヤケが止まらなかった。欲を言えば深見真の真骨頂であるレズビアン×銃器×アクションを観たかったんですが、弥生と唐之杜のそういうシーンは第1期第2話で没にされてましたね。
 菅野祐悟による音楽もオーケストラアレンジが多く、壮大な世界観を構築することを助けていたように感じました。本広作品の『SP』や『踊る大捜査線』でも菅野さんの音楽が全編で冴え渡っていただけに本作でも素晴らしい劇伴を堪能することができました。
結論としては、もう今作以上の映画は今年は無いだろう、というくらいに素晴らしいものでした、気が早い。続編を所望せざるを得ません。

PSYCHO-PASS ASYLUM 1 (ハヤカワ文庫JA)

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アフリカン・ゲーム・カートリッジズ (角川文庫)

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*1:ってか冲方さんは『蒼穹のファフナー EXODUS』とか『攻殻機動隊 新劇場版』、『攻殻機動隊ARISE』TVシリーズ歴史小説の連載等々で忙しいのかもですが第2期のノベライズをお願いします