自主規制のデフレスパイラルは止まるのか――ISIS事件から考えるマスコミの現状

 今回のISIS事件なんですけど、もちろん後藤健二さんと湯川陽菜さんは被害者ですし、ISISが加害者ってのは変わりようもない事実だと思います。だからそこに安倍首相であるとか日本国政府の責任だ、って言うのはお門違い/責任転嫁であって。まぁ、その辺りは政治的分野になってしまうので避けます。それに本題ではない。

 そのISIS事件で、色々なフィクション作品が「自主規制」という名の元に延期・中止に追い込まれています。追い込まれている、というかクレームの先回り先回りをしていって「そこまでしなくても」という域にまで行っているような気が否めません。

 1月23日深夜放送予定だったアニメ『暗殺教室』第3話が情勢に配慮して放送延期となりました。原作読者としてはやむを得ないかも、と感じていることは木曜深夜にやったUstreamでも言ったんですが、まぁナイフ振り回して生き死に考える話ですから、仕方無いのかもなぁ、と思います。

 しかし、「仕方ないなぁ」とは思いますが、あくまでフィクションです。

 アニメ=フィクション。虚構の世界です。いくらテーマがあるとしても、実際に起きている出来事ではない。

 ですから、極論を言ってしまえば、ISISが流している殺害映像/画像をモザイクかけているとはいえそのまま流している報道番組と、『暗殺教室』だったらどっちの方が悪影響を及ぼすのか、って話ですよ。それもゴールデンタイムと深夜枠ですから影響を受けやすい子供は報道番組――そのままの映像を見ちゃっているわけです。そっちの方が悪影響を及ぼすでしょうよ。

 東日本大震災の時も実際の津波映像は流れましたけどそれを連想させるフィクションは規制されました。実際の津波映像は死体が映っている可能性があるんですけどね、ってか実際にどこかの局では映り込んでいたらしいし。それに対して「なみのり」を使うからって『ポケットモンスター』が規制される、ってのはやり過ぎだと思います。

 最近だと佐世保女子高生殺人事件で『PSYCHO-PASS 新編集版』第4話が放送中止になったんですが、そもそも深夜枠のアニメを観る層なんて限られてるんですからその中で影響を受ける人なんていても微々たるもんでしょうよ。それにこの作品は再放送なんですから、影響を受ける人は二年前にとっくに影響を受けてる(論点はそこじゃない)。

 他にも『テラフォーマーズ』で自主規制として黒い丸を使って局所局所を隠していたんですが、深夜枠のニッチな作品ですから観ようとする人はもう知ってるでしょ、そんな規制ポイント、と思うんですけどね……。

 閑話休題

 今回のISIS事件で色々自主規制事案が発生しまして、「クレーマー面倒だから先回りして対処する」的思考が表面化しました。これが今のマスコミを表しているなぁ、と思います。もうテレビがお茶の間を支配できなくなったからお茶の間の意見を配慮しなければならなくなった。1人より99人だったのが、99人より1人になってしまった。

 そんな状況だから『探偵歌劇ミルキィホームズTD』みたいなギャグアニメも放送延期になってしまったし、サッカーくじのCMも五島さんが登場するというくだらない理由で中止になった。

 もう、メディアの規制って止まらないんですかねぇ……。

 『図書館戦争』のような規制・検閲に縛られてエンタメを楽しめない世の中が来ないことを望むばかりです。少しでもこの怒りが届けば。