絶望/希望が表裏一体のセカイで――『ひとりぼっちの地球侵略』


ひとりぼっちの地球侵略 コミックス7巻 - YouTube

 小川麻衣子先生がゲッサンに連載している漫画『ひとりぼっちの地球侵略』を読むに至った経緯は単純なものだ。去年の冬コミで会ったさいむさんという方が(直接勧められた覚えはないけれど)Twitterで激推ししているのを見かけて、「何だろう、こんなに人を動かす力を持った作品なのかな」と興味を持ち元日に購入。そこから僕も心が動かされて昨日、最新巻となる第7巻を購入し読んでしまった。そう、読んでしまったと若干後悔の念を抱いているのは基本的にコミックス派である人間としてはあと数ヶ月も続きを待たねばならないからだ。と言ったら「ゲッサン読めよ!」という声が聞こえてきそうなのだけれども。いつしか僕も『ぼっち侵略』に心を動かされていた。

 物語の内容は実に簡潔で爽やかだ。ある高校に入学する少年・広瀬岬一の前に変わり者の先輩・大鳥希が「一緒にこの地球を侵略しましょう」という言葉を投げかける。岬一は希のことを電波な少女だと認識したが、実は本当に地球を侵略にしにきていたひとりぼっちの宇宙人だった、という導入部から物語は展開してゆく。第7巻まで読んでいるので、そこまで総括して感想を述べることも可能なのだが、まだ発売から一ヶ月も経っていないので伏せておく。ただ、そこまで読んだ感想としては謎や伏線、細かい設定が深まっていくものの全ては第1話と第2話、あるいは第1巻に集約されるのではないか、ということだ。第1話「Togerther 4ever」と第2話「決心」の二篇は特にこの『ぼっち侵略』のキーポイントとなっているように思えて仕方ないのである。

 第1巻の内容は実に簡潔で、これから大きな物語が始まることを予感させるテレビドラマの第1話に似ている。起承転結がこの第1巻の中でも成立しているほか、大きな物語の序章――起承転結の「起」に値する物語としても構成されているからだ。だから『ぼっち侵略』はこの第1巻に集約されているとも言えるし、これからの物語を予感させるいい導入になっていると言い換えることも可能なのだ。第1話と第2話は小さな起承転結の中の「起承」に値する部分だ。岬一が希と出会い決心するまでを描く部分で、学校の入学から出会いと戦闘を描いてゆくある意味ハードな物語になっている。

 話が変わるが、僕はいわゆるセカイ系の物語群が大好きで、その辺りからオタクになった経緯があるのでそのムーブメントが鎮静した現代にその遺伝子を受け継ぐ作品が出現してくれると嬉しく思う。そういった点でも、小川先生の過去作品であり犬村小六先生の小説をコミカライズした『とある飛空士への追憶』が面白かっただけに(といっても小説しか読んでないのだけれど)この『ぼっち侵略』を僕が好きになったのは必然だったのかもしれない。第1巻を読了したとき、高橋しん最終兵器彼女』と似てると感じてその旨をツイートしたが、今ではその考えは変わっている。きみとぼくの簡潔なセカイと、その外に広がる大きなセカイの物語。『ぼっち侵略』は『最終兵器彼女』や、共にセカイ系の代表作として挙げられる秋山瑞人イリヤの空、UFOの夏』が成しえなかったことのアップロードなのだ。

 僕はこの物語を読み始めてまだ一ヶ月のにわかであり、この感想は間違っているのかもしれないし、上手く言語化できていないかもしれない。しかし、第6巻から第7巻に至る喪失感であり転換点を大きく感じ取った者としては、この物語が今よりも多くの人に触れられることを望んでいきたいと強く願う。

 ストレートで、淡くて、脆い。しかし、強固で、壊れない。それが『ぼっち侵略』に抱いている今の思いだ。