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たまには本気で好きなラノベを3つ紹介してみる

小説

十文字青『ぷりるん。~特殊相対性幸福論序説~』(2009)

ラブラブ光線絶賛放射中な妹――うずみ(♀)元・天才美少女、自由奔放な姉――綾(♀)みんなのアイドル、気になるクラスメイト――桃川みう(♀)おみ足がステキな憧れの先輩――小野塚那智(♀)彼女たちに振り回される人――ユラキ(♂)ユラキの悩みは今日もつきることなく、“ぷりるん”はまた現れる。十文字青流、新感覚系ラブストーリー誕生!(一迅社文庫版より)


 書評家・坂上秋成さんが十文字さんの新刊『果てなき天のファタルシス』解説で語られていたので、読んでみました。カバーイラストとかを見るにどんな電波系エロコメディだ、とか想像をしていざ読み始めると……。ということで、ここからはネタバレ丸出しで行かせていただきます。
 おい、やり過ぎじゃねぇか、と。学園のヒロインというのは清純で容姿端麗・成績優秀、そんなイメージだったんですよ。読み始めてみると一変、ただのビッチじゃねぇか。非処女の上毎日性行為を行いそれを主人公にきっかり1時間報告する。でも、主人公が勃たなくて性行為につき合わされるけれどそんなことができるはずものない。ではその理由は、というのが今回の物語の根幹になります。いやはや、こんな物語を書けるってライトノベルは広大だわ……。

 

②松山剛『雨の日のアイリス』(2011)

ここにロボットの残骸がある。『彼女』の名は、アイリス。正式登録名称:アイリス・レイン・アンヴレラ。ロボット研究者・アンヴレラ博士のもとにいた家政婦ロボットであった。主人から家族同然に愛され、不自由なく暮らしていたはずの彼女が、何故このような姿になってしまったのか。これは彼女の精神回路から取り出したデータを再構築した情報――彼女が見、聴き、感じたことの……そして願っていたことの、全てである。第17回電撃小説大賞4次選考作。心に響く機械仕掛けの物語を、あなたに。(電撃文庫版より)

 本で泣くことは少ないのですが、ここまで訴えてくる物語はその中でも一握りだチクショー。そんな奇の衒わなさや、痛々しいシーンは身体の深淵までにも突き刺さってきます。
 『雨の日のアイリス』はアイリスというロボットの目線から描いた自分が壊されて、再構築されたときのデータ=記憶を文字にしたもの、といっても過言では無いです。それくらい、脳内に映像が流れ込んでくる。若干ネタバレですが、第一章の終盤シーンは小説屈指の痛々しさが流れ込んできます。僕はそれに耐えられなかった。涙がボロボロ出て来るは出て来るは。もう読み終わった時は号泣ですよ!
 読み終わってから何かSFランキングでも上位にいっていたことを聞き、納得いたしました。これは読まないと損ですよ!

雨の日のアイリス (電撃文庫)

雨の日のアイリス (電撃文庫)

 

森田季節ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』(2008)

「僕、女の子を殺したんだ」――始まりは、思いがけない人物からのそんな電話。どこか満たされない日々を送る高校生の明海は、孤高の歌姫に魅せられた同級生の少年・神野の信じがたいような昔話をいともあっさりと受け入れてしまう。なぜなら明海も小学生の頃、神野と同じく一人の少女を殺めたことがあるからだった――。よみがえるひと夏の記憶、殺されるためだけに存在する「イケニエビト」の少女、人の記憶を食らう「タマシイビト」からの逃避行。第4回MF文庫Jライトノベル新人賞〈優秀賞〉受賞作。三人の少年少女によるビター・スウィート・ストーリー。(MF文庫J版より)

 森田季節の伝説はここから始まったと言っても過言では無いっ。処女作でここまで書ききるというのは半端がない類稀なる才能だ。
 そんな本書は少年少女が“イケニエビト”と“タマシイビト”を巡る幻想怪奇小説の面と少年少女が音楽で繋がっていく青春音楽小説の面を持ち合わせた一冊です。ライトノベルではありきたりのテーマだ、といえばそれまでなのですが、それを巧く切なく一つの物語へと紡いでいる森田さんは凄いとしか言い様がない。いつの間にか世界に引き込まれて、目から涙が出てくる。それが彼の小説なのです。是非。