セカイのカタチ・アイのカタチ――山本寛監督作品『私の優しくない先輩』

 鹿児島県沖に浮かぶ小さな島に転校してきた西表耶麻子は南愛治先輩のことが大好きだった。ただ、その想いを自分から告げることは出来ず、ずっと想いを秘めたままだった。しかしある時、暑苦しくてウザくてこの島で唯一優しくない不破風和先輩にその想いを知られてしまう。その次の日、風和から呼び出された耶麻子は愛治に告白するための計画をはじめることになる。

 日日日による原作小説を数年前に読んでいたんですが、それに勝るラブ&ポップな世界観になっていました。ミュージカル要素もあって(嫌いじゃないけど)、正直川島海荷のアイドル映画の域を超えていない描写も存在しますが、あれ込みで作品として成り立っているなぁ、と感じました。
 山本監督曰く「この作品でセカイ系に決着をつけた」とのことで、まぁ主人公が虚弱体質で、自分の生き死により恋愛のことを考えていたい、ってのは広義の意味でのセカイ系に含まれると思いますが、監督の関わった『涼宮ハルヒの憂鬱』に比べるとセカイ系としてのパンチが物足りないような。脚本が『武士道シックスティーン』『つり球』の大野敏哉さんなので少女の成長といった面でも十二分に描けたと思うので「なんだかなぁ」と言った感じ。
 劇伴は監督の盟友・神前暁さん。また素晴らしい音楽が鳴り響いています。がっぷり四つ監督と神前さんが組んだのはこの作品が最後なので『Wake Up, Girls! 続・劇場版』では療養から回復して欲しいものです。主題歌の「majiでkoiする5秒前」は広末涼子版を神前さんが編曲、川島がカバーしたバージョンですが、監督お馴染みのダンスEDでとても良かったです。楽しめました。
 山本監督作品、ということである程度贔屓目なのは勘弁してください。ホントにヤマカン大好きなんです、どの作品も。