梅津作画の臨界点――梅津泰臣監督作品『A KITE』

 親を殺され、警察の鑑識をしている赤井という男に引き取られた少女・砂羽は殺人請負人として殺人術を教えられていた。親殺しに復讐することを目的に殺人請負人をしている砂羽は、自身の親を殺した犯人が赤井とその同業者である蟹江だと知っていたがまだ行動には移さずにいた。ある日、赤井と蟹江に指示された任務で殺人請負人の少年・音不利と出会った砂羽は彼に惹かれてゆく。

 梅津監督の作品って多くを語らず絵で見せることが多いと感じていて、本作では特にその作風が顕著に表れています。例えばラストシーンとかその塊で、砂羽がこの先どうなるのか、という答えは砂羽の目線の先にいる視聴者に委ねられているように思えて仕方がないのです。『ガリレイドンナ』もこの先の星月たちがどうなるかは分からず終いですし(言うまでもなく作品単体で完結はしてますよ!)、梅津作品ってそういうところ大好きなんです。アニメたるアニメというか、アニメというフォーマットでやる意義がある、というか。
 本作は砂羽と音不利の関係と復讐という二つを主題にアクション&ラブが繰り広げられていますが、ストーリーラインの簡潔さもさることながら、梅津キャラデザが冴え渡り、エフェクトが素晴らしいという点に触れないわけにはいきません。というか梅津キャラデザが古臭いとか言うなよ、これがカッコイイんだろ!『ウィザードバリスターズ』良かったじゃねーか!本作も例に違わずバリバリ梅津キャラが動きますし、バリバリエフェクトがかかります。素晴らしいとしか言えない。
 本作はOVAなので50分尺ですし、是非オススメします。ラルフ・ジマン監督による実写版も四月に公開されるので期待せざるを得ません。