B級ガンアクション/Beautiful Monster?――『カイト/KITE』

 ネタバレを多く含みます。

 静岡ではやっていないので東京・渋谷の劇場まで行って観てきました。チケット+パンフレット代より旅費の方が高い。4/18に行ってきたのですが、翌日行けば梅津泰臣監督に会えたんですが、まぁ日曜日休まないと次の日に響くし、みたいな理由で土曜日に。わざわざ東京まで行って映画観るというのは初めてだったんですが(先行上映入れていいなら『ばらかもん』を汐留で観てますけど)、それほどに『A KITE』の実写版、というところに惹かれていた節はあります。

 で、その原作OVAを観たときから感じているのは梅津作品はとにかく絵がカッコイイ、ということです。確かにストーリーも結構凝っててTVシリーズだと破綻するくらいの濃密さだけど、それよりも絵です。というか、絵のカッコよさでここまで作品の魅力を高めれるというのも凄いと思います。その絵のカッコよさをいかに実写フォーマットに落とし込むか、と考えた上でラルフ・ジマン監督は無国籍感溢れる地で性奴隷が売買されている、という設定を構築しそこで砂羽(演:インディア・アイズリー)が親の復讐の為に街を駆け巡らせました。

 ストーリーラインとしては人身売買組織のエミールという男であったりとか、アンプ、前述の性奴隷などの新要素が加えられ、新たな『カイト』として再構成/リライトされています。あと、直接的描写のなかったカイトが飛ばされるカットが追加されたりとか。その新要素については映画の90分尺にOVA2話を広げるには仕方のないことでしょうし、実写では到底不可能なエフェクトをカットし、再現できるようなアクションに切り替えたときに破綻しないストーリー構成をする場合、今作のようにトイレでの戦闘であるとか冒頭の老婦人の生死の違いなどが変化するのはやむを得ないことだと思います。蟹江の未登場とかもそれで大丈夫でしょう。あんな梅津キャラデザのトンデモオヤジが再現されたら逆にビビる。

 とはいえ、音不利の登場が唐突であったり、結末――赤井との戦闘がアッサリ片付いてしまったことはちょっと納得がいきません。あと、ラストシーンで音不利と砂羽が生きている描写とか。まず音不利の登場が唐突な件については、それ以外の選択肢が無かったのかもしれませんがもうちょっと工夫できたように思えます。赤井の戦闘はそれまでのエミールを追う部分に対して少なかったので、原作での葛藤描写を忠実に再現してほしかったなぁ、と。で、最大の不満は生きているラスト。ハリウッド映画は何でもハッピーエンドにしたいのか! と感じざるを得ないのですが、どうせ『KITE LIBERATOR』を実写化しないんだから、生きている設定じゃなくて原作通り殺せば良かったじゃん、と思います。せめて音不利は殺しとこうよ……。

 最後に。Beautiful Monsterを連呼するあのエンドロールは何なんだよ! 耳には残るけど、砂羽は、砂羽は……そんなんじゃないんだよ!(サワと砂羽は別物だと言っとるだろうが!)

 まぁ、それなりに好きなB級ガンアクションサスペンスでしたけど、これを観に行くために東京に行ったというよりは、これついでで神保町に行った、と言う方が正しいような気になってしまう作品でした。次は『台風のノルダ』で上京だ……。