宇宙開発要素は必要だったのか否か――『KITE LIBERATOR』

肉親の復讐を果たした殺し屋の砂羽は、忽然と姿を消して行方知れずになってから数年後。都会の闇に一人の少女が軽やかに舞う。少女の名は、百南花。彼女の知られざる過去と運命の皮肉に翻弄されながらも絶望しない強さと同時にデリケートで繊細な心。その眼差しの先に見える未来は……⁉︎

 ハリウッド版『KITE』の前に観ていたのですが、備忘録を付けることを忘れていたタイトル。『A KITE』の続編、という扱いですが別作品として観た方が良いかもしれない作品でした。というのも、前作はエロティシズムに満ち溢れたアクションものだったんですが、今作は宇宙開発+SFアクションという別ジャンルになっているから。繋がりは少ししかないので、別作品として感想を書きます。
 主人公・百南花の父親が宇宙ステーションでハルクのようになる、というトンデモ設定から始まって、SFアクションとしては次第点な導入部から父娘の決闘と和解、そしてトンデモオヤジたち、という構成はまさに梅津作品で「そうだよ、これを観たかったんだ!」という印象を受けました。言うなれば『ガリレイドンナ』の1話+11話。ただ、宇宙ステーションの描写からいきなりハルク化して戦闘、というのはどこのトンデモ特撮だと言わざるを得ない唐突さ。前作は爪先くらいは地に足ついていたのに、今作は飛翔してしまい、ちょっと散らかり過ぎかと。終わり方も投げやりなリドルストーリーなのは梅津作品には良くあるからなぁ、と半ば諦めていますが……。
 まぁ、『A KITE』と比べずに単体で観たら案外面白い作品だったと思います。作画やエフェクトは文句無しの上にカメラワークが凄まじく良い。主演も井上麻里奈とあって、殺気立った女子高生を見事に作り上げています。ハリウッド版『KITE』で砂羽が死ななかったので、これを実写化する余地はありますし、もしそうなったらどうなるか、期待せざるを得ません。
KITE LIBERATOR 限定版 [DVD]

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  • メーカー:Happinet(SB)(D)
  • 発売日:2008/03/21
  • メディア:DVD