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『幕が上がる』の幕が上がる――青春/魂の発露

 富士ヶ丘高校に通う高橋さおりたち三年生三人は先輩の卒業後、自分たちが最上級生として演劇部を率いることになる。方向を考えている新学期、美術教師として赴任した吉岡美佐子が現れる。彼女は学生時代に学生演劇の女王として名を馳せていた。そこへ県内随一の演劇強豪校から転校生として演劇部に所属していた中西悦子が転校してくる。学生演劇とは? 青春とは? 全力で青春を謳歌する演劇部員たちの姿を描いた青春映画。

 本広克行監督ファンであり、モノノフ*1である自分としては絶賛に値する内容でした。しかもロケ地は地元の連続。行ったことのある場所ももちろんある訳で、登場人物たちは自分と同じ場所を生きている感覚に襲われた二時間。ラストシーンまで、その幕が上がる瞬間まで目を離せない映画です。
 平田オリザさんによる原作小説は既読でした。まぁ、ある人*2に勧められたから読んだんですが学生演劇と青春というテーマを描ききった名作でして、これを如何に映画として再構成するのか、という命題に向かったのが本広監督と脚本の喜安浩平さん。本広監督の青春映画『サマータイムマシン・ブルース』の系譜のまま(冒頭のシーンでハイパーリンクがあって嬉しかった!)新たな青春映画が築かれていました(あ、喜安脚本の『桐島、部活やめるってよ』は未見ですスイマセン。原作小説は読んでるんですよ?)。
 で、ようやく映画本編の話ですが、「これでもか!」と高校生活の葛藤と青春、友情を全力で突っ走ってゆく主演陣・ももいろクローバーZの面々の演技も予想以上のもので、特に中西悦子役の有安杏果さんと橋爪裕子役の玉井詩織さんの演技力には飲み込まれました*3。この二人は劇中劇『銀河鉄道の夜』でもジョバンニとカンパネルラを演じているんですが、本広監督の言う「女優ももクロ」の真髄を観ました。あれは素晴らしいなんてものじゃない。それを超越した次元にいました。かつ、ももクロをバックアップする共演陣も黒木華ムロツヨシと強力。演技に笑いに魅せてもらいました。
 平田さんの現代口語演技理論を基に自然で本当に存在しそうな女子高生が創られていて、思春期の素がそこにある。それだけでもこの映画が撮られなければこの世に産まれなかった成功だし、その産まれは必然だった。そう思える映画でした。
 あ、僕も「県大会に出場しているライバル校Bの生徒役」で画面内にいます*4のでよろしくお願いします。

*1:ももいろクローバーZファンの通称

*2:エキストラ出演のときに会った方――つまり原作情報、洩れてましたということです。

*3:しかし僕はあーりん推し。

*4:つまりエキストラ出演